みかん箱

ゲーマー備忘録

「うみねこのなく頃に」というコンテンツについて

うみねこく頃に とは何だったのか

ひぐらしく頃に 業」に続き、「ひぐらしく頃に 卒」が発表され、10年以上前の作品であるとは思えないほど盛り上がっている令和の「ひぐらし」。

ひぐらし業が予想以上に面白かったため、ホイホイとうみねこ咲を買った私から見た「うみねこ」を語ります。核心的なネタバレはしないつもりです。

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イントロダクション

かねてより私は根っからのひぐらしファンであり、小説版、漫画版、アニメ版の3媒体で楽しんでいました(ゲーム版は買う機会を逃し続けて先延ばしにしていましたが、ひぐらし業と卒の間の暇潰しがてら奉を買ってプレイしています)。

 

ひぐらし業という作品は、放送前の時点ではリメイクかな?と思わせる前情報でありながら、実際は完全新作というギミックが仕込まれてあり、また、ストーリー自体も面白く毎週楽しみに観劇していました。

 

そこで登場した「エウア」と呼ばれるキャラクター。

higurashianime.com

彼女がうみねこに出てくる「フェザリーヌ・アウアウローラ」なるキャラクターに酷似(現時点では本人か不明)しているという話を知り、前々から「うみねこ」に興味があったこともあり、また、丁度うみねこ咲の発売が近いこともあって「うみねこ」ワールドに身を投じることを決めました。あとおまけで付いてくる黄金夢想曲をやりたかった

 

うみねこく頃に 咲 という作品について

結論から申し上げますと、プレイした率直な感想は「なんだこれ?」でした。

ひぐらしが大好きだった私は、「これが本当にひぐらしの作者が書いた『なく頃に』シリーズなのか?」という感想すら抱きました。

 

60時間近い時間をかけて読んだ結果、残ったのはただ虚無のみ。密室の謎はすべて放り投げられ、犯人が犯行に至った理由は意味不明であり、なにか語るかと思えば「もはや語りません」と放り投げるのみ。

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エピソード1~6までは、多少の冗長さや意味のなさげな駄文に目をつぶれば「面白い」とは感じていました。様々な謎が提示され、ミステリーとファンタジーが交錯する世界。ひぐらしの時にも感じていた「この物語はどう着地するのだろう?」という物語を楽しむうえで最も面白い風呂敷の広げ方をしていました。

 

しかし、エピソード7では密室のトリックをろくに解説もせず放置。

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密室トリックについての種明かしはこんな感じで理解不能なファンタジー駄文を延々と講釈するのみ。

その上、黒幕の動機もろくに語らずに「理解できないお前が悪い」というような書き方をしている始末。

 

エピソード8では、この六軒島での事件が「なぜ、なんのために」起こされたかが明かされたのでしょう。しかし、プレイヤーの視点からは何も理解できず、ただ煙に巻かれたように「ハッピーエンド?」を見せつけられて終わります。挙句の果てには「この物語の真相を知ろうなんて知的強姦者もいいところ(意訳)」と言わんばかりの言葉をプレイヤーに叩きつけてきます。

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魔法バトルがぐだぐだで読みづらい上に対して面白くなくただただテンポを削ぐ要素になっている、ひぐらしに比べてそれぞれのキャラにたいして魅力がない、等々の問題点はまだ目を瞑れました。しかし、仮にもミステリーを謳っていながら「何も明かされない」エンドとなったのが最大の問題であり、発売当初から後半のエピソードが批判されている原因の一つと言われていることに納得してしまいました。

 

ひぐらしは「ミステリー」を謳っておきながら、あまりにも飛躍したほぼ推理不能な結末であったために批判を浴びている事実もあります。が、しかし、辻褄は合わせたオチを用意し、それをきれいにまとめ上げることによって、全体で見れば「面白い作品」になっていました。

しかし、うみねこのゲーム版は、オチはどうあれ放り投げている(ようにしか見えない)ため、「面白くない作品」と評価を下してしまいました。

 

真相をぼかすのは考察を楽しんでもらうため、というスタンスは、同人版で発売毎に考察しながら追っている方に向けて結末を語らない、ということならまだ理解できなくもないです。しかし、1本にまとめられた商業作品では、この結末だとプレイヤーが消化不良感を抱えるかもしれないという懸念は無かったのでしょうか?(無かったからこそ加筆されずにあの結末なのでしょうが……)

 

ただ、魔女の設定や世界構造のアイデア自体は非常に気に入ったので惜しい作品だなぁ、とは感じていました。

 

うみねこく頃に ゲーム版の問題点

 

さて、ここまで「うみねこく頃に咲」のEp1~8までを読んだ感想をつらつらと綴ってきましたが、大きな不満点、ひいては問題点は以下の3つであると思われます。

 

  1. ミステリーを謳っているくせに犯人もトリックも動機も不明
  2. 主人公である戦人の心情変化の理由が不明
  3. ひぐらしで言うところのルールXYZ、つまりうみねこに於けるルールXYZが不明

 

1番目については、上に記述した感想の通りです。作中内の人物が「フーダニット、ハウダニットホワイダニットがどうこううんたら」とご高説を語るのに対し、この物語はそのどれもが曖昧にぼかされています。

 

2番目について。ゲームのさなか、主人公である戦人は「魔女のゲームの真相に至った」と公言し、それまでは事件の真実を暴こうと立ち回っていた主人公が唐突に事件の真実を隠匿し始めます。プレイヤーからすれば全く理解不能な心変わりであり、そして、主人公に感情移入しづらくなることによって物語を読み進めるモチベーションが一気にそがれてしまいます。心変わりの理由が知りたい、と思って読み進めても結局待っているのは曖昧にぼかされた消化不良なEp8です。

 

3番目については、そもそも「ルールの存在自体」がゲーム内で明かされてすらいません。これは、漫画版でようやく明かされたものです。このルールはうみねこく頃にという作品に於いて犯人の動機、事件のトリック、ファンタジーと幻想の境目、と多くの描写の根幹を成しているものです。これが明かされないということは、ひぐらしで例えるならば"ひぐらし世界のルールXYZ"が明かされずに祭囃子編を迎えるようなものと言っても過言ではありません(うみねこは結末が放り投げられているようにしか見えないのでなお酷い)。

また、「赤き真実」や「黄金の真実」が持った意味(あるいは定義)も明かさませんでした。これも「不明なルール」の一つに含まれるでしょう。

 

他にも様々な批判点が挙げられていますが、私が特に気になった点は以上の3つでした。

そして、私は(考察も含めて)「うみねこは、もういいかな……」と思ってしまいました。

 

コミカライズ版「うみねこく頃に」を読んで

 

Ep8を読了し、最初に思ったこと。それは

なんでこれをゲーム版でやらなかった!?

です。

 

コミカライズ版「うみねこく頃に」では、ゲーム版のうみねこに比べて大幅に加筆がなされています。特に、Ep7とEp8ではゲーム版で曖昧にされた真相を徹底的に明らかにした、と言えるほどの加筆がなされています。

 

Ep7では、原作では謎のファンタジー怪文書で流された、密室のトリックがほぼ暴かれます。加筆のされ方は正直雑だと感じましたが、しかし、ここでは「真相を提示した」こと自体に意味があると感じます。

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Ep8では、犯人の過去、語られていなかった空白の期間、そして犯人がその期間を経て犯行を決意するまでのストーリーが明確に語られています。

 

また、犯人の動機が語られることにより、戦人が心変わりしてゲームマスターへと成った理由も明らかになります。

 

そして、コミカライズ版うみねこではルールXYZが明確に明かされます。これによって、ファンタジーと幻想の切り分け、うみねこ世界の描写のルール、事件のトリックなどが一挙に明かされることになります。

また、「赤き真実」と「黄金の真実」がどういったものであるのかも明確に描かれ、それによって終盤の縁寿のシーンやエンディングなどに対する心証が大きく変わました。

 

他には、読んでいて冗長でくどくながったるく、読むのが結構な苦痛であった魔法バトルシーンも漫画という媒体の力でかなり圧縮され、非常に読みやすく、また面白さに一味加えるものとなっています(これはゲーム版がノベルゲームである、という枷もありましたが)。

 

うみねこく頃に」の漫画版は冊数が多く(Ep1~8まで各4~9巻あり、計50巻)、非常にボリュームのある作品となっています。しかし、この冊数を割くだけの完成度の高さは確かにあり、とても面白く読めました。

ゲーム版で明かされなかった真実が明かされたためスッキリした、というのもありますが、単に一作の漫画として見ても非常に美しくまとまった名作だと声を大にして言いたいぐらいです。

 

うみねこく頃に というコンテンツに対して

 

うみねこく頃に、とGoogle先生にお伺いを立てると、「うみねこ Ep8 炎上」だの「うみねこ ひどい」だのとサジェストが出てきます。

確かに、ゲーム版のうみねこは正直、初めてプレイしたときは「これはひどい」となってしまいました。「ひぐらし」で散々「こんなのミステリーじゃない!」と騒がれ拗ねた作者の、プレイヤーに対するアンチテーゼではないのか?という感想すら抱きました。

 

しかし、コミカライズ版「うみねこく頃に」は燃え上がった原因に対して解決を提示し、納得のいくとても完成度の高い結末となっていました。

ゲーム版からこの結末、というか真相の構想ははっきりしていたのでしょうが、それがようやくプレイヤーに対して明確に提示されたのがコミカライズ版うみねこと言えるでしょう。

 

ゲーム版のうみねこに対する批判だけを見て「うみねこく頃に」というコンテンツに触れないのはちょっと、いやかなり勿体ないと個人的には思います。まあ漫画版は非常に集めづらいのがネックですが、今の時代は電子書籍で手軽に集めることができます。全50巻は手軽じゃないとか言っちゃダメ

 

ぜひ、あなたも六軒島の真実を封じた猫箱を開いてみませんか?

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では、私はひぐらし奉の続きを読むのに忙しいのでこの辺りで。

 

 

 

……うみねこのアニメ?何の話ですか?

 

うみねこのなく頃にはアニメ化されていないッッッッッ!!!!!!!」

「グッド!」